『太公望(上中下)』宮城谷昌光

太公望〈上〉 (文春文庫)
太公望〈上〉 (文春文庫)
文藝春秋 2001-04
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周建国の功労者、羌公太公望呂牙を主人公に少年期から周建国時までを描いている
太公望は天才軍略家として考えられているが、宮城谷はさらに剣術の達人として描いている。
鮮やかな太公望の策謀が展開され、一対一で闘っても神の様な剣術で勝ってしまう。
それだけでは太公望が薄っぺらになってしまいがちだが、そうならないのが宮城谷の宮城谷たる所以である。
例えば、太公望は男女の機微に疎かったり、情に厚かったりするのが彩りを添えている。
太公望の舅の峰尊がよい。
そういった良さはあるものの、この物語は今ひとつ推せない。
それは主に登場人物の多さに依る。
もちろんこういった話は人物がたくさん出てくるものなのだが、
憶えておかないといけない人物が多すぎる。
二人ずつペアにして動かしてわかりやすくするのかと思いきや、大胆に組み替えていったりする。
さらに煩雑な地名が輪をかけている。
普通の人は読むのが大変そうである。
他の物語では主人公は拠点から動かないが太公望はあちこちに飛び回り、彼の部下もあちこちいくので把握しきれない。
ここら辺りは一考の余地があったのではないだろうか。
ラストはなあ。
個人的にはここから面白くなりそうなのにといった印象。
太公望の著作ではないと認めつつも六韜三略の臭いが感じられる。
まあ私は六韜三略が結構好きなので別に良いのだが。

2005.12.20 記