『敦煌』井上靖
敦煌 (新潮文庫) | |
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2006.1.20 記
毎日芸術大賞受賞作
中国の西域(両漢や唐などの強大な帝国の時に領土になった中国西方地帯)を舞台にした歴史小説。
井上靖はもともと純文学畑の人であったのだが、後に盛んに歴史小説を書く。
この作品はその代表作で純文学と大衆文学の両方の良いところを取り入れたという意味で、中間文学と呼ばれた。
描写というより説明が主の地の文が淡々と進んでいき、
主人公の目線での世界が語られる。
全編を通して乾いた文体が筋を通っていて、その旋律がこの作品のもの悲しさを引き立てていると言える。
女が死ぬ場面は激しい衝撃を憶えた。
死ぬこと自体は別にたいしたことではないが、そのタイミングと死に方が非常に鮮やか。
しかも死んだ後がこの作品の本編というのがすごいところである。
結末はだらだらとした感じではなく、ゆるゆるとランディングに見事に成功している。
あの結末から逆算してこの物語を思いついたのだとしたら、それはとても凄いことだ。
この作品はなかなか面白かった。