『童貞』酒見賢一

童貞 (集英社文庫)
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集英社 2001-09
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中国雑話 中国的思想 (文春新書) 陋巷に在り〈1〉儒の巻 (新潮文庫)

古代中国と思しき邑が舞台。
主人公が何者なのかは最後に明かされるわけだが、本当に「どうでもよいことである」。
大体、夏王朝の禹王が治水工事に一生を捧げたという話なんて普通の人は知らない。
それをわかって読むと一層おもしろみがあるだろう。
彼は作中でグンがやった方法とは別の方法で黄河の治水を成し遂げるのだが、それはまた別の話である。
物語としては今ひとつ。
やはり上で述べたように治水を成し遂げる所まで書いた方が面白かったのではないだろうか。
しかしそうするとタイトルとバランスがとれなくなるので別のタイトルが必要だったかとは思うが。
彼の作品は性というものを意識せずには居られない。
その意味でこの物語は非常に酒見賢一らしい作品といえるだろう。
しかし正直言ってあまり面白くはなかった。
どうも伸び悩んでいる感じだ。
この作品だけを指して言っているのではない。
後宮小説」を超える作品がまだ出ていないことが問題だろう。
もっともまだ大長編「陋巷にあり」を読んでいないのでそれを読んでから改めて評価を下すべきだ。
ラストの収束辺りがやはり急ぎすぎたのではないだろうか。
設定の面白さ、世界の構築、エピソードの構成はやはり良いものを持っている。
もっとラストまでの物語構成を考えるとよいかもしれない。

2005.11.26 記