『ケルト民話集』フィオナ・マクラウド
ケルト民話集 (ちくま文庫) | |
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「クレヴィンの竪琴」
王女が好きになった男と結ばれなくてと言う話。
ありがちな感じの話かと思ったが、だんだんもの悲しくなってくる。
クレヴィンは何をしたのだろう。
彼がかわいそうすぎる。
だからといって誰が悪かったのだろうか。
強いて言えば王が物語の原因だとも言えるのだが、それも酷な話。
この物語はクレヴィンのもの悲しさが覆っていて読後感があまり良くない。
作品として見るとクレヴィンが前半からまないのはおかしい。
しめの文もなんだか。
王女の恋の相手であるコルマクが主の話とはとうてい言えないと思うのだが。
なんだかんだ言ってもこの話はフィオナマクラウドの代表作と言えるできばえである。
「雌牛の絹毛」
次の話に続く主人公エイリイとイスラがどうして国を出て旅に出なくてはならなくなったのかという話。
この話も暗い。
これ単体では成り立たない話ではある。
「ウルとウルラ」
やはり幸せにはなれない。
この作品も暗い。
ただこれはそう見るべき作品でもない。
まあまあ。
「白熱」
息子が白熱という病にかかって無くなる様を回想の形式でつづっている。
白熱というのはスコットランドで運命に見込まれて急激に身体が衰えて死んでしまう病とのこと。
というわけでこの話も明るくなるはずもなく。
掌編のわりにはよく纏まっている話だと思う。
「海の惑わし」
なんか難しい話。
アンドラは物語の最後で正気にもどったのだろうか。
この話も気が狂うところを描いていて暗い。
「罪を喰らう人」
この話は罪を喰らってお金をもらった人がその後どうなったかを描いた話。
本当に救いの無い話で読むのがつらくなるほどである。
この作品は安易に面白かったとかは言いたくない。
しかし、一度読めばその印象をぬぐうことが出来ないだろう。
作品としての出来もかなりのレベルにある。
構成も良く描写も上手い。
これは傑作だと思う。
「九番目の波」
死を誘う九番目の波に呼ばれた男の話。
決して逃れられない逃避行も暗い。
そこそこ良くできている。
ラストの台詞がよいね。
「神の裁き」
なんだか感想を書くのがだんだんつらくなってきた。
なかなか出来が良いと思うのだが、とにかく暗いのだ。
この作品も多分にもれず。
最後に語り手がいう言葉が秀逸。
「イオナより」
聖者の島イオナが彼の物語の舞台であり、それについて作者自身が解説しているものか。
正直ちょっと難しいと感じた。
末尾に荒俣宏による解説があり、時代背景などよくかけている。
作者フィオナマクラウドが叫んだ言葉が引用してあった。
「ウェールズのケルトは余裕がある。アイルランドのケルトも楽天的だ。
しかしスコットランドのケルトだけが昏く悲しい。」
2006.1.8 記