『ウィロー』ウェイランド・ドルー

ウィロー (ハヤカワ文庫FT)
ウィロー (ハヤカワ文庫FT)黒丸 尚

早川書房 1988-06
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原案ジョージルーカス、脚本ボブドルマンによる同名の映画のノベライゼーション。 ただし映画とは設定が少し違い、登場人物の背景も大幅に明らかになっているとのこと。 映画は遠い昔に見たことがあるもののさっぱり覚えておらず新鮮な気持ちで読んだ。 主人公であるウィローは偉大な魔術師になると予言されているものの結局できるのは手品だけ。 ラストまで行っても偉大な魔術師とはとてもとても言えない。 性格も平凡でまあ勇気はあるものの取り立てて言えるほどではない。 しかし、だからこの作品は美しく結末を迎えるのだろう。 エローラがなあ。結局赤ん坊のままで結末を迎えるのが不満ではある。 文章は今ひとつ違和感がある。 最初は訳がこなれていないのかとも思ったが、ノベライゼーションの持つ独特の違和感なのではないかと考えている。 このノベライゼーションによる独特の違和感というのは考えてみたのだがちょっと言語化できない。 まだこの問題について語るほどの理解が無い。 物語を組み立てるときの作りが脚本と小説では違うのかもしれない。 台詞回しの違和感もある。 ストーリーのテンポもなんだか。
ただし、この作者の文章家としての技量も垣間見えた。 地の文が特徴的であろう。 情景描写の幅の広さである。これだけ広いと世界の広がりが違う。 個々の場面でも明確に事象を描写してある。 特に抹消の儀式や戦闘の場面では著者の力量が存分に発揮されている。 情景説明も説明にとどまらず、描写として生き生きと立ち上がってくる。 この部分はとても勉強になった。参考にしたい。 まあ人に勧められるほど素晴らしい本だったかと言われると疑問。 面白いのだが、もっと面白くなっただろうと予想できるだけに。

2005.8.26 記