『はてしない物語(上下)』ミヒャエル・エンデ

はてしない物語
はてしない物語上田 真而子

岩波書店 1982-06-07
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再読。だと思うが、以前いつ読んだか全く憶えていないので初読相当。
言わずとしれた名作。誰でも一度は読んだことがあるだろう。
改めて読んで、やはり凄いと思った。
その物語の構成力。
エピソードの広げ方。
どちらも素晴らしい。超一流の歴史に残る作品というのはこういうのを言うのだろう。
物語の始めあたりで語られる読書の楽しみについて触れた部分は、
どれもおそらくはエンデ自身が感じていたことなのだろう。
読書、本に対する深い愛情が感じられた。
本が好きな人ならこの部分だけでもなにか幸せな気分になれると思う。
バスチアンという主人公はあまり素晴らしい人格でもなく、素晴らしい能力があるわけでもない子供だが、
それが物語を通して成長、まあほんの少しではあるのだが、するというのは見事に表現できている。
この作品を「読んでいる本の中へ入っていってしまう物語」というキーワードだけで思いつけるものだろうか。
作者の深い洞察が加えられて、この上ない輝きを放っている作品と思う。
アトレーユの友情が素晴らしい。
バスチアンはその友情に値しない詰まらぬ餓鬼なだけに一層、アトレーユが美しく見える。
まあ、ほめるばっかりもあれなので、物語の導入の方は描写も素晴らしかったが、
途中からその緊迫感、もちろん情景描写に限るが、は幾分減じてしまったように思う。
始めの力で最後まで持って行ければさらに良いものになっただろうに。
そこは惜しい。
オリジナルの新しい生き物がたくさん出てくるが、それだけだなあ。
始めは面白かったけど、あとのほうでは少し食傷気味であった。
この本はけして読んで損はしない本である。
児童書の枠に収まらない素晴らしい文学作品と思う。
近年流行の某ファンタジー作品なんか足もとにも及ばないと思うのは私だけだろうか。
再読にあたってけちって岩波少年文庫で買い直したのだが、失敗した。
当然ハードカバーで買うべきだった。

2005.12.4 記